2026年9月2日、Matter規格の次期バージョン「Matter 1.7」の初期ドラフトが公開されました。Matter 1.6が登場したばかりだと思っていたら、もう次のバージョンの話?と驚いた方もいるかもしれません。今回のドラフトには、量子コンピュータ時代に備えたセキュリティ強化や、分電盤・ブレーカーといった「電気インフラ」への対応拡大など、これまでにない方向性の変更が盛り込まれています。
この記事では、現時点で判明しているMatter 1.7ドラフトの主な変更点を、専門用語をかみ砕きながらわかりやすく解説します。まだ正式リリースではなく内容が変わる可能性もあるため、「今どんな方向に進んでいるのか」を先取りでチェックする記事として読んでいただければと思います。
Matter 1.7は「まだドラフト段階」
まず前提として、今回の情報はMatterの開発リポジトリ上に「0.9 ballot(投票案)」として提出されたドラフトの内容です。正式仕様として確定したものではなく、多くの新機能には「プロビジョナル(暫定)」というラベルが付いています。つまり、この後の議論次第で内容が変わったり、次のバージョンに先送りされたり、場合によっては削除される可能性もあります。現時点では「Matter 1.6が最新の正式仕様」であることに変わりはありません。
人の位置や気配をより正確につかむ「プレゼンスセンシング」強化
Matter 1.7ドラフトでは、機器同士の距離を測る「Proximity Ranging(近接測位)」という新しいクラスターが追加されています。これまでの人感センサーは「人がいる/いない」の2択で判断するものが中心でしたが、今後はより細かい位置情報をもとに自動化のトリガーを組めるようになる可能性があります。
あわせて、既存の「Occupancy Sensing(在室検知)」クラスターにも、これから在室状態がどう変化しそうかを予測する「PredictedOccupancy(予測在室)」属性が追加される見込みです。たとえば「まもなく部屋に人が来そうだから先に照明を点けておく」といった、一歩先を読んだ自動化が実現しやすくなると期待されています。
分電盤・ブレーカーなど「電気インフラ」にも対応拡大
もう一つの大きな変更点が、Matterの対応範囲が家電単体から住宅の電気インフラそのものへ広がっていることです。ドラフトには、ブレーカー(回路遮断器)、漏電・アーク断路装置、サージプロテクターといった機器タイプに加えて、家庭の分電盤に相当する「Electrical Distribution Enclosure(電気配電盤)」も新たに追加されています。
これまでのMatterはすでに太陽光発電やバッテリー、エコキュートやEV充電器などのエネルギー機器に対応してきましたが、今回はそれらをつなぐ「配電まわり」まで視野に入れた形です。あわせて「Power Range Adjustment(消費電力の範囲調整)」という機能も追加され、機器に対して「ちょうど何Wで動かして」ではなく「このくらいの範囲で動いてOK」という指示ができるようになる見込みです。将来的には、電力が逼迫している時間帯に家電側で自動的に消費電力を抑える、といった使い方につながる可能性があります。
カメラ・音声メディア機能の拡張
Matter 1.5でカメラ対応が始まったのは記憶に新しいところですが、1.7ドラフトではカメラ機能がさらに拡張されます。カメラのデバイスタイプが改訂され、映像を解析する「AV Analysis」や周囲の状況を検知する「Ambient Context Sensing」機能が新設される見込みです。これにより、メーカーごとにバラバラだった「人を検知したら通知する」といったカメラの検知機能が、今後は標準規格の範囲でも実現しやすくなるかもしれません。
また、音声まわりでは「Streaming Audio Player」「Casting Audio Player」といった新しいデバイスタイプが追加され、再生中の楽曲情報の取得やプレイリスト管理、アカウントログインの仕組み(OAuth 2.0)にも対応が進むとされています。
量子コンピュータ時代に備えた「ポスト量子暗号」への第一歩
もう一つ注目したいのが、Matterのセキュリティ基盤に「ポスト量子暗号(PQC)」という考え方が初めて取り入れられた点です。将来、量子コンピュータの実用化が進むと、現在使われている暗号方式の一部は解読されやすくなると懸念されています。これに備えて、機器の正当性を確認する「デバイスアテステーション(機器認証)」の仕組みに、量子コンピュータでも解読されにくい暗号方式を使えるようにする準備が始まりました。
ただし今回対応するのは、あくまで機器をMatterネットワークに参加させる際の「本人確認」部分に限られます。日常的な通信すべてが量子耐性になるわけではない点には注意が必要ですが、規格の根幹部分に量子時代を見据えた設計が入り始めたこと自体は大きな一歩といえそうです。
その他の変更点
このほかにも、サーモスタットが複数のセンサーを扱えるようになる機能や、火災・CO警報器での煙濃度測定、窓シェードの位置を数値で細かく指定できる機能、湿度をコントロールする新しいデバイスタイプの追加なども予定されています。家全体の環境管理がより細かくできるようになる方向性がうかがえます。
今の時点で気をつけたいこと
繰り返しになりますが、今回紹介した内容はあくまでドラフト段階の情報です。正式なMatter 1.7としてリリースされるまでには時間がかかり、内容が変更・削除される可能性も十分にあります。今すぐ買い替えや設定変更が必要になるものではないので、「へえ、そんな方向に進んでいるんだ」という程度に捉えておけば大丈夫です。SwitchBotやAqaraなど主要メーカーの対応状況は、正式版がリリースされ次第あらためて紹介する予定です。
まとめ
Matter 1.7のドラフトでは、プレゼンスセンシングの強化、電気インフラ機器への対応拡大、カメラ・音声メディア機能の拡張、そしてポスト量子暗号への第一歩という4つの大きな方向性が見えてきました。まだ確定情報ではありませんが、スマートホームが「機器単体の便利さ」から「家全体のエネルギーと安全を管理する仕組み」へと広がっていく流れを感じさせる内容です。正式仕様が固まり次第、対応機器の情報とあわせて続報をお届けします。
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よくある質問
Matter 1.7は「まだドラフト段階」
まず前提として、今回の情報はMatterの開発リポジトリ上に「0.9 ballot(投票案)」として提出されたドラフトの内容です。正式仕様として確定したものではなく、多くの新機能には「プロビジョナル(暫定)」というラベルが付いています。つまり、この後の議論次第で内容が変わったり、次のバージョンに先送りされたり、場合によっては削除される可能性もあります。現時点では「Matter 1.6が最新の正式仕様」であることに変わりはありません。
人の位置や気配をより正確につかむ「プレゼンスセンシング」強化
Matter 1.7ドラフトでは、機器同士の距離を測る「Proximity Ranging(近接測位)」という新しいクラスターが追加されています。これまでの人感センサーは「人がいる/いない」の2択で判断するものが中心でしたが、今後はより細かい位置情報をもとに自動化のトリガーを組めるようになる可能性があります。
分電盤・ブレーカーなど「電気インフラ」にも対応拡大
もう一つの大きな変更点が、Matterの対応範囲が家電単体から住宅の電気インフラそのものへ広がっていることです。ドラフトには、ブレーカー(回路遮断器)、漏電・アーク断路装置、サージプロテクターといった機器タイプに加えて、家庭の分電盤に相当する「Electrical Distribution Enclosure(電気配電盤)」も新たに追加されています。
カメラ・音声メディア機能の拡張
Matter 1.5でカメラ対応が始まったのは記憶に新しいところですが、1.7ドラフトではカメラ機能がさらに拡張されます。カメラのデバイスタイプが改訂され、映像を解析する「AV Analysis」や周囲の状況を検知する「Ambient Context Sensing」機能が新設される見込みです。これにより、メーカーごとにバラバラだった「人を検知したら通知する」といったカメラの検知機能が、今後は標準規格の範囲でも実現しやすくなるかもしれません。


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